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April 3, 2012
エクスプレス・スクリプツによるメドコ買収が成立
FTC(連邦取引委員会)による調査が昨年から続いていたエクスプレス・スクリプツによるメドコの買収ですが、昨日承認され、買収が成立しました。買収総額は291億ドル、CVSによるケアマーク買収の217億ドルを上回る大規模M&Aとなります。
買収後の年商は合算で1,160億ドル、取り扱い調剤枚数は年間17億3,000万枚で市場シェア32%、全米の調剤の3枚に1枚がエクスプレス・スクリプツ/メドコ扱いということになるわけです。ちなみに2位はCVSケアマークで7億7,500万枚の17%だそうです。
この買収、ファーマシー業界は反対のスタンスを変えておらず、複数の業界団体が先週差し止めを求めて裁判所に提訴しています。
FTCは買収後も競合環境は変わらず市場のダイナミズムは維持されるという見解なのですが、賛成3人に反対1人、つまり反対意見もあって、果たして本当に消費者にとって益となるのかどうかは今後を見守るしかないでしょう。
エクスプレス・スクリプツ/メドコはメールオーダーを事業として持っています。
つまり消費者にダイレクトに調剤を売るチャネルを持っているというわけで、これを売上高ランクに当てはめるとCVSケアマーク、ウォルグリーンに次いで3位となる。
だからウォルグリーンは売上高が下がってでもエクスプレス・スクリプツとの取引をやめる方を選択したのでしょうね。
しかし1,160億ドルという年商は桁が大きいですね。
フォーチュン500社ランクで13位、ドラッグホールセラー最大手マッケソンの15位を上回ることになります。
ちなみに製薬メーカー最大手のファイザーが31位。
このM&A、製造側と販売側の両サイドに少なからぬ影響を与えるだろうと思います。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 4:13 PM |
February 24, 2012
[プロクター&ギャンブル] 総社員数の1割にあたる5,700人をリストラ
P&Gが大規模なリストラプランを発表しました。非製造部門以外の人員をトータルで5,700人解雇、その他、マーケティング費用の削減や組織編成の見直しといったリストラで、2016年までに100億ドルのコスト削減を目指すとのこと。非製造部門以外の社員数は5万7,000人だそうなので、全体の10%の人を減らすということになります。
米国企業の人員削減によるコストコントロールはよくあることなのですが、けっきょく調子の悪い企業に限られていて、アメリカでも優良企業は人を切るということをあまりしません。とくにP&GやGEといった有名な企業は雇用調整というものをあまりせず、人材を保持する傾向が強いです。
そういう意味で、今回のP&Gによる大規模人員削減はインパクトが大きい。
なんでも175年間の歴史なのかで、大きなリストラは今回のも含めて2回しかないそうです。
大手CPGメーカーもいまは大変な時期なんだなと言うことを感じますね。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:41 PM |
July 28, 2011
[ジューエル・オスコ] ユニリーバと共同でグルーポン販促を実験
スパーバリュ傘下のジューエル・オスコが、ユニリーバの協力でグルーポンを利用したプロモーションの実験を実施します。
商品はベン&ジェリー等のアイスクリーム、定番価格15ドルを9ドルで提供し、グルーポンのサイトで参加者を募り、購買者はFSPカードを店頭で使用することで割引の適用を受けることになります。
大手小売企業によるグルーポンの実験は先月ビッグYが実施したものが最初で、今回はおそらく2回目の事例です。
[ビッグY] グルーポンの実験を開始
いちおうビッグYはお客が集まり成功したというコメントを出しています。
調査で分かっているグルーポンの特徴はチェリーピッカーが多いということで、だから小売にとって価値があるのかどうかを見極めることが課題となっていますね。
ただFSP(ロイヤルティマーケティング)と絡めることで何かができるかもしれないという点に期待が寄せられていて、たぶんNBメーカーが販促手法としてどのぐらい価値を見出すかがポイントになるんじゃないかなと思っています。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:51 PM |
March 21, 2011
[P&G] 原材料コスト上昇で洗剤を値上げ
プロクター&ギャンブルが洗剤の取引価格を6月6日までに最大で4.5%値上げする予定であることを明らかにしました。取引価格なので店頭売価は各小売業の判断という言うことになります。
またアナリストによると、P&Gは粉洗剤の取引価格を最終的には13%まで上げ、液体洗剤については販促の頻度と値下げ幅を縮小するだろうとしています。
先週の木曜日にはキンバリークラークがおむつやベビー用おしりふき等の値上げを発表したばかり。
P&Gはおむつも値上げするだろうというのがもっぱらの見方ですね。
コモディティ商品にインフレ懸念です。
P&Gやキンバリーは最大手でトレンドセッターなので、おそらく他社も追随して上げて行くことでしょう。
小売企業がどう対応するのか注目されます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:53 PM |
March 17, 2011
10年間で114万トンのパッケージを削減
2020年までに25億ポンド(約114万トン)のパッケージが削減されるという発表がありました。リリースしたのはGMA(グローサリー製造業協会)。
パッケージには三種類ありますね。
・商品そのものを入れる一次パッケージ。
・保管、輸送、マーケティングメッセージ伝達、ディスプレー、商品の保護、などを目的とした二次パッケージ
・保管または輸送を目的としたさらに大きな三次パッケージ
ここで言うパッケージとはつまり、商品の中身以外のすべてを含んでいます。
これらが各メーカーの努力により、これから10年間で114万トン削減されるということです。
これを引っ張っているのがウォルマート、具体的にはパッケージングスコアカードと言うことになるのでしょう。
製造プロセスを変える大きな投資を考えると、メーカーとってパッケージを減らすメリットとはそれほど大きなものではありませんから。
これを聞いて思ったこと。
アメリカは一次パッケージを内容量に比較して大きくさせる傾向が強いですが、一方で余計なPOPをつけない傾向が強いので二次パッケージは少ない。
日本は一次パッケージは内容量並みであるけれど、二次パッケージのとくにPOPやディスプレーといった余計なものが多すぎる。
特に日本のメーカーはPOPという名のゴミを大量生産してますよね。
ゴミと言っている意味は、店舗に送られてはいるけれど、バックルームに放置されて使われず捨てられるものが非常に多いからです。
胸に手を当ててみましょう。
でもこのニュースを聞いて、日本のメーカーが余計な装飾を無くそうとするとは思えないので、やはりウォルマートのような強いリテーラーが日本にも必要なんでしょうね。
またはGMAのような業界横断型の、天下りがいないフェアなメーカー協会が必要なのだろうなと強く思います。
こういうベンチマークスタディと、指針のようなものを、行政指導ではなく自らが創造していかない限り、進化はないでしょう。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:09 PM |
October 20, 2010
[アメリカ流通視察] 大手メーカーの力技
昨日はシカゴでウォルグリーンのビューティ担当の元幹部に話を伺いました。
今回で2回目、昨年もいろいろ参考になる話が聞けたのですが、今回も面白かった。
その中からひとつだけ。
某大手メーカーがスキンケアで、マス環境にしてはプライスポイントの非常に高い商品を販売しています。
ブランド名は伏せます。
もうかれこれ2年ぐらいになるんでしょうか、これはセルフじゃなかなか売れないだろうなあと思っているんですが、なかなか棚から消えません。
これについて質問してみました。
「あれ、売れてるんですか?」
「あまり売れてないわね」
「ああいう高額アイテムは商圏を選ぶと思うのですが、なぜ全店に置いてあるんでしょう?」
「それは、○○○(メーカー名)ですからねえ。ウォルグリーンでも売れるのは数100店舗ぐらいだろうけど、メーカーのCEOが直接ウォルグリーンのCEOに話をつけて全店配荷にしてしまう。政治力ですよ。」
「ああ、日本でもよくある話じゃないすか、それ(笑)」
そうか、あのアイテムは○○○の力技で棚の上に並んでいるわけなんですね~。
こういう話も知ることが、アメリカ流通業界の本当の姿を理解する第一歩でしょうね。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:39 PM |
August 5, 2010
[プロクター&ギャンブル] 増収減益の理由
プロクター&ギャンブルが第4四半期の業績を発表、売上高は5%増、最終利益高は12%減でした。
この理由があまりにも分かりやすい。
P&Gは昨年、利益よりもシェアの拡大にプライオリティを置き、大幅な値下げを実施しています。その目的は当然消費の刺激にあるわけですが、いまは利益を確保する時期ではないと判断したわけですね。
ウォルマートが今年初頭にグローサリーの大々的なロールバック(値下げ販促)を実施しました。プロジェクト・インパクト失敗の修正プランだったのですが、いまは時期としてさらに価格を前面に押し出した方がいいだろうという同じ判断もあったのかもしれません。
P&Gはその結果として、売上は伸びたけど、利益は落ちた。
当然のことながら、値下げすれば、利益は圧迫されますよね。
P&Gのような巨大なメーカーでも、"いまは利益よりもシェアの拡大"とうたうと、それがそのまま財務諸表に表現されてしまうんだなという分かりやすさに、ふと興味をそそられたのでした。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:36 PM |
May 21, 2010
[プロクター&ギャンブル] ネット直販を開始、狙いはマーケティング
プロクター&ギャンブルがネット直販を開始しました。サイト名はeStore、自社の商品を消費者に直接販売しています。1月に始めることを公にしていて、その後テストをしつつ、今月に入って公式公開にいたったというわけです。
目的は利益を上げることではなくてマーケティング、消費者動向を直接把握しようとするもので、獲得するインサイトは自社のブランドへ利用するだけではなくて、小売企業とも共有するとしています。
P&Gはネット直販にはずいぶん以前から自らの足を踏み入れていて、90年代末から例えばビューティケアのReflect.comや、TheEssentionals.comなどを作り、しばらく運営してスクラップしています。
なのでアメリカの流通業界においては珍しい事例ではないのですが、日本ではあまり聞かないことですよね。
今回はレビュー機能や、Facebookと連動するなど、今までとはまた違った取り組みを実施しているようです。
もう一つ面白い話。
ヨーロッパでブーツの商品をイタリアのファーマシーへ販売するというニュースが今月初めにリリースされてます。ブーツがイタリアのファーマシーに商品を売るためにP&Gの流通販路に乗せるというわけです。
ブランドはLaboratories Serum 7。
これってアメリカではターゲット、カナではショッパーズ・ドラッグ・マートが独占販売形式で売ってるブランドですね。つまり海外においては一つの独立したブランドとして売ろうとしているものでして、とすると今回の取り組みが成功すると、P&Gを使って海外で販路をこれから拡販するということがあるのかもしれません。
日本にも、商品で再上陸するかもしれない。
P&Gっておもしろい企業です。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:57 PM |
April 8, 2010
流通各社が環境テーマでプロモーション企画を続々投入中
今年のアースデーは4月22日、始まってから40周年目だそうです。
この日に合わせて、環境に関連する企画を各社が実施し始めました。
クローガーはマイバッグのデザインコンテスト、4月12日~5月21日までネットで一般からデザインを募って、1等になったデザインは実際にバッグに使用され、さらに1000ドル相当のギフトカードが提供されます。
ターゲットは全店舗にリサイクリンボックスの設置を発表しています。紙、ペットボトル、携帯電話、プリンターカートリッジ、などを投げ込めるボックスを店の前に据え付けます。
小売企業だけではなく、メーカーもプロモーションを企画しています。大きいのはP&Gのフューチャー・フレンドリー企画、すでに存在する商品の中からエコな商品を選別して、まとめてプロモーションするというアイディアです。
これについては先月エントリーしましたね。
[プロクター&ギャンブル] 環境テーマのプロモーションを全米展開
実はいまウォルマートのサステナビリティ・イニシアチブについてのレポートを作成中でして、先月ベントンビルに行ったのもこれが目的でした。
エコムーブメント、アメリカで波が確実にうねりはじめているのを感じます。
環境に疎いアメリカ人も少しずつ変わりつつあるようです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 6:41 AM |
March 17, 2010
[プロクター&ギャンブル] 環境テーマのプロモーションを全米展開
プロクター&ギャンブルが環境をテーマにした販促キャンペーンを全米で展開します。名称はFuture Friendly、期日は3月29日から、全米の15,000店舗で一斉にプロモーションが始まります。
販促プラットフォームには、テレビコマーシャル、デジタル広告、ソーシャルメディア、商品ラベル、陳列ディスプレー、が含まれてます。
そのコンセプトが興味深い。
既存の商品の中から環境テーマに合うものを選択し訴求するわけなのですが、ポイントは、高額な環境に良い商品を提供するのではなくて通常の商品のアピールの仕方を変えている点にあります。
つまり、環境に貢献はしたいけど商品にエキストラは払いたくないよという大多数を占める消費者に対して訴えようとしている。
同社の調査によるとその比率は68%らしい。
商品を選択するに当たっての条件は、熱エネルギー、廃棄、水の3つの分野において、最低一つの分野で測定可能で意義のある節約を提供する商品、としています。
例えばタイドのコールドウォーター、温水を使用する必要がないため熱エネルギーの節約になる、というわけです。
実は、2007年からイギリスとカナダですでに実施しているんですね。ホームページもあります。
アメリカでは昨年のアースデーにウォルマートを含む一部の店舗と地域で実験、そして今年から全米展開というわけです。
なぜイギリスとカナダからなのかは書いてないんですが、おそらく消費者の環境意識が高いんでしょうね。
アメリカ人もようやく環境メッセージを受け取る準備ができてきたとプロクター&ギャンブルが踏んだというわけです。
これもまた、震源地はウォルマート。
プロクター&ギャンブルは濃縮型洗剤の開発を当初は渋っていて、これを説得したのがウォルマートという有名な話があります。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:46 PM |
February 15, 2010
[ウォルマート] プロクター&ギャンブルと共同でテレビ番組をプロモート
先週末にWSJ誌が報じたところによると、プロクター&ギャンブルとウォルマートが共同で出資してテレビの2時間ドラマをプロモートするそうです。
単なる広告スポンサーとしてではなく、プロモートする、つまりコンテンツの内容に影響を及ぼすという点で取り組みが新しく、報道されたようですね。
目的は、ほんとうに家族向けのテレビドラマが近年見当たらなくなってしまったのだが、視聴者はこれを求めているということが調査で分かっており、二社が共同で投資してこのニーズに応える、となっています。
投資費用は450万ドル、両社の比率は明らかになっていないのですが、P&Gの方がかなり多いようで、対等というわけではなさそうです。
ですからこの日記のタイトルも本当はP&Gを頭に持ってこなければならないのかもしれないのですが、迷った結果、流通ブログなのでウォルマートとしました。
番組のコマーシャルはもちろん二社のみ、また番組内で商品が出てくるシーンを使うそうです。ウォルマートの場合はPBのグレートバリューでしょうね。
ちなみに番組名は"Secret of the Mountain"4月にNBCで放映予定です。
さて、ウォルマートはここ数年広告予算をかなり上げているんですね。もともと売上高に対する広告費率は極めて低く、上げたと言っても他社と比べるとそれでも低いのですが、しかし分母が大きいですから予算自体はかなり大きい。
参考までに2008年度の広告費は11億ドルで小売業界では1番、アメリカ全体では9位ぐらいではないかと思うのですが、昨年はさらにこれが上がったんじゃないかと言われてます。
またその使い方も昔に比べると洗練されてきていて、これはマーケティング担当役員のステファン・クィンがメーカー出身であることと無関係ではありません。