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April 3, 2012
エクスプレス・スクリプツによるメドコ買収が成立
FTC(連邦取引委員会)による調査が昨年から続いていたエクスプレス・スクリプツによるメドコの買収ですが、昨日承認され、買収が成立しました。買収総額は291億ドル、CVSによるケアマーク買収の217億ドルを上回る大規模M&Aとなります。
買収後の年商は合算で1,160億ドル、取り扱い調剤枚数は年間17億3,000万枚で市場シェア32%、全米の調剤の3枚に1枚がエクスプレス・スクリプツ/メドコ扱いということになるわけです。ちなみに2位はCVSケアマークで7億7,500万枚の17%だそうです。
この買収、ファーマシー業界は反対のスタンスを変えておらず、複数の業界団体が先週差し止めを求めて裁判所に提訴しています。
FTCは買収後も競合環境は変わらず市場のダイナミズムは維持されるという見解なのですが、賛成3人に反対1人、つまり反対意見もあって、果たして本当に消費者にとって益となるのかどうかは今後を見守るしかないでしょう。
エクスプレス・スクリプツ/メドコはメールオーダーを事業として持っています。
つまり消費者にダイレクトに調剤を売るチャネルを持っているというわけで、これを売上高ランクに当てはめるとCVSケアマーク、ウォルグリーンに次いで3位となる。
だからウォルグリーンは売上高が下がってでもエクスプレス・スクリプツとの取引をやめる方を選択したのでしょうね。
しかし1,160億ドルという年商は桁が大きいですね。
フォーチュン500社ランクで13位、ドラッグホールセラー最大手マッケソンの15位を上回ることになります。
ちなみに製薬メーカー最大手のファイザーが31位。
このM&A、製造側と販売側の両サイドに少なからぬ影響を与えるだろうと思います。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 4:13 PM |
February 24, 2012
[プロクター&ギャンブル] 総社員数の1割にあたる5,700人をリストラ
P&Gが大規模なリストラプランを発表しました。非製造部門以外の人員をトータルで5,700人解雇、その他、マーケティング費用の削減や組織編成の見直しといったリストラで、2016年までに100億ドルのコスト削減を目指すとのこと。非製造部門以外の社員数は5万7,000人だそうなので、全体の10%の人を減らすということになります。
米国企業の人員削減によるコストコントロールはよくあることなのですが、けっきょく調子の悪い企業に限られていて、アメリカでも優良企業は人を切るということをあまりしません。とくにP&GやGEといった有名な企業は雇用調整というものをあまりせず、人材を保持する傾向が強いです。
そういう意味で、今回のP&Gによる大規模人員削減はインパクトが大きい。
なんでも175年間の歴史なのかで、大きなリストラは今回のも含めて2回しかないそうです。
大手CPGメーカーもいまは大変な時期なんだなと言うことを感じますね。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:41 PM |
July 28, 2011
[ジューエル・オスコ] ユニリーバと共同でグルーポン販促を実験
スパーバリュ傘下のジューエル・オスコが、ユニリーバの協力でグルーポンを利用したプロモーションの実験を実施します。
商品はベン&ジェリー等のアイスクリーム、定番価格15ドルを9ドルで提供し、グルーポンのサイトで参加者を募り、購買者はFSPカードを店頭で使用することで割引の適用を受けることになります。
大手小売企業によるグルーポンの実験は先月ビッグYが実施したものが最初で、今回はおそらく2回目の事例です。
[ビッグY] グルーポンの実験を開始
いちおうビッグYはお客が集まり成功したというコメントを出しています。
調査で分かっているグルーポンの特徴はチェリーピッカーが多いということで、だから小売にとって価値があるのかどうかを見極めることが課題となっていますね。
ただFSP(ロイヤルティマーケティング)と絡めることで何かができるかもしれないという点に期待が寄せられていて、たぶんNBメーカーが販促手法としてどのぐらい価値を見出すかがポイントになるんじゃないかなと思っています。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:51 PM |
March 21, 2011
[P&G] 原材料コスト上昇で洗剤を値上げ
プロクター&ギャンブルが洗剤の取引価格を6月6日までに最大で4.5%値上げする予定であることを明らかにしました。取引価格なので店頭売価は各小売業の判断という言うことになります。
またアナリストによると、P&Gは粉洗剤の取引価格を最終的には13%まで上げ、液体洗剤については販促の頻度と値下げ幅を縮小するだろうとしています。
先週の木曜日にはキンバリークラークがおむつやベビー用おしりふき等の値上げを発表したばかり。
P&Gはおむつも値上げするだろうというのがもっぱらの見方ですね。
コモディティ商品にインフレ懸念です。
P&Gやキンバリーは最大手でトレンドセッターなので、おそらく他社も追随して上げて行くことでしょう。
小売企業がどう対応するのか注目されます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:53 PM |
March 17, 2011
10年間で114万トンのパッケージを削減
2020年までに25億ポンド(約114万トン)のパッケージが削減されるという発表がありました。リリースしたのはGMA(グローサリー製造業協会)。
パッケージには三種類ありますね。
・商品そのものを入れる一次パッケージ。
・保管、輸送、マーケティングメッセージ伝達、ディスプレー、商品の保護、などを目的とした二次パッケージ
・保管または輸送を目的としたさらに大きな三次パッケージ
ここで言うパッケージとはつまり、商品の中身以外のすべてを含んでいます。
これらが各メーカーの努力により、これから10年間で114万トン削減されるということです。
これを引っ張っているのがウォルマート、具体的にはパッケージングスコアカードと言うことになるのでしょう。
製造プロセスを変える大きな投資を考えると、メーカーとってパッケージを減らすメリットとはそれほど大きなものではありませんから。
これを聞いて思ったこと。
アメリカは一次パッケージを内容量に比較して大きくさせる傾向が強いですが、一方で余計なPOPをつけない傾向が強いので二次パッケージは少ない。
日本は一次パッケージは内容量並みであるけれど、二次パッケージのとくにPOPやディスプレーといった余計なものが多すぎる。
特に日本のメーカーはPOPという名のゴミを大量生産してますよね。
ゴミと言っている意味は、店舗に送られてはいるけれど、バックルームに放置されて使われず捨てられるものが非常に多いからです。
胸に手を当ててみましょう。
でもこのニュースを聞いて、日本のメーカーが余計な装飾を無くそうとするとは思えないので、やはりウォルマートのような強いリテーラーが日本にも必要なんでしょうね。
またはGMAのような業界横断型の、天下りがいないフェアなメーカー協会が必要なのだろうなと強く思います。
こういうベンチマークスタディと、指針のようなものを、行政指導ではなく自らが創造していかない限り、進化はないでしょう。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:09 PM |
October 20, 2010
[アメリカ流通視察] 大手メーカーの力技
昨日はシカゴでウォルグリーンのビューティ担当の元幹部に話を伺いました。
今回で2回目、昨年もいろいろ参考になる話が聞けたのですが、今回も面白かった。
その中からひとつだけ。
某大手メーカーがスキンケアで、マス環境にしてはプライスポイントの非常に高い商品を販売しています。
ブランド名は伏せます。
もうかれこれ2年ぐらいになるんでしょうか、これはセルフじゃなかなか売れないだろうなあと思っているんですが、なかなか棚から消えません。
これについて質問してみました。
「あれ、売れてるんですか?」
「あまり売れてないわね」
「ああいう高額アイテムは商圏を選ぶと思うのですが、なぜ全店に置いてあるんでしょう?」
「それは、○○○(メーカー名)ですからねえ。ウォルグリーンでも売れるのは数100店舗ぐらいだろうけど、メーカーのCEOが直接ウォルグリーンのCEOに話をつけて全店配荷にしてしまう。政治力ですよ。」
「ああ、日本でもよくある話じゃないすか、それ(笑)」
そうか、あのアイテムは○○○の力技で棚の上に並んでいるわけなんですね~。
こういう話も知ることが、アメリカ流通業界の本当の姿を理解する第一歩でしょうね。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:39 PM |
August 5, 2010
[プロクター&ギャンブル] 増収減益の理由
プロクター&ギャンブルが第4四半期の業績を発表、売上高は5%増、最終利益高は12%減でした。
この理由があまりにも分かりやすい。
P&Gは昨年、利益よりもシェアの拡大にプライオリティを置き、大幅な値下げを実施しています。その目的は当然消費の刺激にあるわけですが、いまは利益を確保する時期ではないと判断したわけですね。
ウォルマートが今年初頭にグローサリーの大々的なロールバック(値下げ販促)を実施しました。プロジェクト・インパクト失敗の修正プランだったのですが、いまは時期としてさらに価格を前面に押し出した方がいいだろうという同じ判断もあったのかもしれません。
P&Gはその結果として、売上は伸びたけど、利益は落ちた。
当然のことながら、値下げすれば、利益は圧迫されますよね。
P&Gのような巨大なメーカーでも、"いまは利益よりもシェアの拡大"とうたうと、それがそのまま財務諸表に表現されてしまうんだなという分かりやすさに、ふと興味をそそられたのでした。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:36 PM |
May 21, 2010
[プロクター&ギャンブル] ネット直販を開始、狙いはマーケティング
プロクター&ギャンブルがネット直販を開始しました。サイト名はeStore、自社の商品を消費者に直接販売しています。1月に始めることを公にしていて、その後テストをしつつ、今月に入って公式公開にいたったというわけです。
目的は利益を上げることではなくてマーケティング、消費者動向を直接把握しようとするもので、獲得するインサイトは自社のブランドへ利用するだけではなくて、小売企業とも共有するとしています。
P&Gはネット直販にはずいぶん以前から自らの足を踏み入れていて、90年代末から例えばビューティケアのReflect.comや、TheEssentionals.comなどを作り、しばらく運営してスクラップしています。
なのでアメリカの流通業界においては珍しい事例ではないのですが、日本ではあまり聞かないことですよね。
今回はレビュー機能や、Facebookと連動するなど、今までとはまた違った取り組みを実施しているようです。
もう一つ面白い話。
ヨーロッパでブーツの商品をイタリアのファーマシーへ販売するというニュースが今月初めにリリースされてます。ブーツがイタリアのファーマシーに商品を売るためにP&Gの流通販路に乗せるというわけです。
ブランドはLaboratories Serum 7。
これってアメリカではターゲット、カナではショッパーズ・ドラッグ・マートが独占販売形式で売ってるブランドですね。つまり海外においては一つの独立したブランドとして売ろうとしているものでして、とすると今回の取り組みが成功すると、P&Gを使って海外で販路をこれから拡販するということがあるのかもしれません。
日本にも、商品で再上陸するかもしれない。
P&Gっておもしろい企業です。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:57 PM |
April 8, 2010
流通各社が環境テーマでプロモーション企画を続々投入中
今年のアースデーは4月22日、始まってから40周年目だそうです。
この日に合わせて、環境に関連する企画を各社が実施し始めました。
クローガーはマイバッグのデザインコンテスト、4月12日~5月21日までネットで一般からデザインを募って、1等になったデザインは実際にバッグに使用され、さらに1000ドル相当のギフトカードが提供されます。
ターゲットは全店舗にリサイクリンボックスの設置を発表しています。紙、ペットボトル、携帯電話、プリンターカートリッジ、などを投げ込めるボックスを店の前に据え付けます。
小売企業だけではなく、メーカーもプロモーションを企画しています。大きいのはP&Gのフューチャー・フレンドリー企画、すでに存在する商品の中からエコな商品を選別して、まとめてプロモーションするというアイディアです。
これについては先月エントリーしましたね。
[プロクター&ギャンブル] 環境テーマのプロモーションを全米展開
実はいまウォルマートのサステナビリティ・イニシアチブについてのレポートを作成中でして、先月ベントンビルに行ったのもこれが目的でした。
エコムーブメント、アメリカで波が確実にうねりはじめているのを感じます。
環境に疎いアメリカ人も少しずつ変わりつつあるようです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 6:41 AM |
March 17, 2010
[プロクター&ギャンブル] 環境テーマのプロモーションを全米展開
プロクター&ギャンブルが環境をテーマにした販促キャンペーンを全米で展開します。名称はFuture Friendly、期日は3月29日から、全米の15,000店舗で一斉にプロモーションが始まります。
販促プラットフォームには、テレビコマーシャル、デジタル広告、ソーシャルメディア、商品ラベル、陳列ディスプレー、が含まれてます。
そのコンセプトが興味深い。
既存の商品の中から環境テーマに合うものを選択し訴求するわけなのですが、ポイントは、高額な環境に良い商品を提供するのではなくて通常の商品のアピールの仕方を変えている点にあります。
つまり、環境に貢献はしたいけど商品にエキストラは払いたくないよという大多数を占める消費者に対して訴えようとしている。
同社の調査によるとその比率は68%らしい。
商品を選択するに当たっての条件は、熱エネルギー、廃棄、水の3つの分野において、最低一つの分野で測定可能で意義のある節約を提供する商品、としています。
例えばタイドのコールドウォーター、温水を使用する必要がないため熱エネルギーの節約になる、というわけです。
実は、2007年からイギリスとカナダですでに実施しているんですね。ホームページもあります。
アメリカでは昨年のアースデーにウォルマートを含む一部の店舗と地域で実験、そして今年から全米展開というわけです。
なぜイギリスとカナダからなのかは書いてないんですが、おそらく消費者の環境意識が高いんでしょうね。
アメリカ人もようやく環境メッセージを受け取る準備ができてきたとプロクター&ギャンブルが踏んだというわけです。
これもまた、震源地はウォルマート。
プロクター&ギャンブルは濃縮型洗剤の開発を当初は渋っていて、これを説得したのがウォルマートという有名な話があります。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:46 PM |
February 15, 2010
[ウォルマート] プロクター&ギャンブルと共同でテレビ番組をプロモート
先週末にWSJ誌が報じたところによると、プロクター&ギャンブルとウォルマートが共同で出資してテレビの2時間ドラマをプロモートするそうです。
単なる広告スポンサーとしてではなく、プロモートする、つまりコンテンツの内容に影響を及ぼすという点で取り組みが新しく、報道されたようですね。
目的は、ほんとうに家族向けのテレビドラマが近年見当たらなくなってしまったのだが、視聴者はこれを求めているということが調査で分かっており、二社が共同で投資してこのニーズに応える、となっています。
投資費用は450万ドル、両社の比率は明らかになっていないのですが、P&Gの方がかなり多いようで、対等というわけではなさそうです。
ですからこの日記のタイトルも本当はP&Gを頭に持ってこなければならないのかもしれないのですが、迷った結果、流通ブログなのでウォルマートとしました。
番組のコマーシャルはもちろん二社のみ、また番組内で商品が出てくるシーンを使うそうです。ウォルマートの場合はPBのグレートバリューでしょうね。
ちなみに番組名は"Secret of the Mountain"4月にNBCで放映予定です。
さて、ウォルマートはここ数年広告予算をかなり上げているんですね。もともと売上高に対する広告費率は極めて低く、上げたと言っても他社と比べるとそれでも低いのですが、しかし分母が大きいですから予算自体はかなり大きい。
参考までに2008年度の広告費は11億ドルで小売業界では1番、アメリカ全体では9位ぐらいではないかと思うのですが、昨年はさらにこれが上がったんじゃないかと言われてます。
またその使い方も昔に比べると洗練されてきていて、これはマーケティング担当役員のステファン・クィンがメーカー出身であることと無関係ではありません。
どのように私はバッキング変圧器を配線のですか?
さらにメーカーとの共同広告をウォルマートは増やそうとしているのですが、ブランド主体としてウォルマートを従とする作り方で、メーカーからお金だけ取って小売主体のコマーシャルを作る業界でよくあるやり方を大きく変えています。
今回のテレビドラマのプロモートも、このマーケティング戦略変更の一環なのかなと感じています。
【追記】
明日より某小売企業の研修が来米し一週間ほどコーディネートです。セミナーが3回、少々ハードなスケジュールなので更新している時間が少なくなりエントリーが乱れると思いますが、ご容赦ください。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 11:42 AM |
February 11, 2010
[GS1] リコールポータルにいっそうの参加を呼びかけ
GS1はサプライチェーンのグローバルな国際標準規格を設計し実施する国際組織です。分かりやすいのはバーコード、最近ではEPCglobalといってRFIDの世界標準化を研究するグループを組織してますね。
先週、FMI(食品マーケティング協会)とGMA(グローサリー製造業協会)が共同で開催したサプライチェーンカンファレンスで、GS1 USの上級ディレクターが、Rapid Recall Exchangeというポータルへの参加をとくに中小企業に対して呼びかけ、これをFMIがニュースとしてリリースしました。
このRapid Recall Exchangeとは、リコールが発生した場合にまず当事者(つまりメーカー)がリコール情報を通知し、これが関連企業(卸や小売企業)に速やかに知らされるという仕組みです。
現在登録企業数は144社、このうち通知を受ける企業が83社、通知する企業が61社だそうです。
ポータルがきっちり機能するためには可能な限りの参加者が必要なわけで、とりわけ中小企業の登録がまだ少ないのでFMIが広く参加を呼びかけたというわけです。ちなみに現在の登録数ですでに金額ベースで市場の85%をカバーしているそうです。
また近いうちに政府の管轄機関であるFDA(食品医薬品局)にリコール用のケースナンバーを送るインターフェースも開発するそうです。
私が今日これを取り上げた理由は、こういう業界をまたがった標準的な仕組みを作るがアメリカは本当に早いなと、ちょっと感心したからです。
動きが迅速な理由は簡単で、スーパーマーケット業界のFMI、ドラッグストア業界のNACDS、グローサリーメーカー業界のGMA、このわずか三者が集まるだけで食品と日用品を売る業界に必要な大きな話をどんどん進められるからですね。
とくにGMAの存在が大きい。GMAに相当する協会は日本に存在しません。
一度大手メーカーさん数社を訪問し、日本型GMAの必要性を説いて回ったことがあるんですが、興味をあまり示してくれませんでした。
僕の力不足でもあるんですが。
日本の流通業界の明るい未来のためには必ず必要だと今でも思っているんです。
リコールの情報を1ヶ所に集約し、その上で必要な企業に即座に通知しアクションを促すという仕組みは、やはりとても効率的ですよね・・・。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:10 PM |
January 20, 2010
[プロクター&ギャンブル] ネット販売サイトをオープン予定
先週、P&Gが直販サイトをオープンさせるプランを持っていることをWSJ紙が報じました。P&Gの商品のみを販売するネット販売ビジネスで、サイトはwww.pgestore.com、まだ公開されおらず、近々オープンする予定のようです。
目的はリサーチ、またはマーケティング、消費者とダイレクトにつながることで何かを得ようとしているわけです。
名称は失念しましたが、P&Gは自社のビューティケア商品を売るサイトを以前持ってましたね。これはもう閉鎖されてます。またイギリスではネットスーパーに投資してます。
加えるに、以前エントリーしましたが専門店チェーンのArt of Shavingを買収したり、洗車ビジネスを買ったりと、消費者とダイレクトに接するビジネスは結構展開していまして、今回のプランはその延長線上にあると理解すると分かりやすいです。
つまりP&Gとしては珍しいことではない。
ただ日本も含めたメーカーの世界の常識に照らし合わせると、少々珍しいと言うことになるわけです。
P&Gはそういう企業です。
P&Gはエスノグラフィー的なアプローチをこの10年ぐらい強めてます。
簡単に言うと、消費者の生活の中にまで入り込んでその行動を深く理解しようとする手法で、調査を主体とする従来のマーケティング手法からさらに一つ突っ込んだやり方です。
CEOみずからが消費者の家に行って、消費行動を観察し、分析し、理解する。
P&Gは実はこれをやってます。
さらに、新興国では小売の店員として社員を派遣して流通を理解しようとまでしています。
つまりネット販売も含めた一連の動きはおそらくエスノグラフィー的な発想から出ているんじゃないかというのが私の理解なんです。
そしてこの手法を採用している小売企業がテスコ、ということになります。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:22 PM |
September 9, 2009
[クラフト] キャドバリーに176億ドルの買収提案
クラフトはアメリカの大手食品メーカー、キャドバリーはイギリスの大手菓子メーカーです。
キャドバリーは価格が安いとして提案を即座に拒否、クラフトはあきらめず交渉を続けるとしていまして、敵対的買収に進んで行く可能性もあります。
仮に買収が成立すると売上高は500億ドル、日本円にして約5兆円という巨大な企業となる可能性があるのと、これが菓子を中心とした分野であるという点、それと買収要因がグローバル市場であるという点で、私の興味を引いています。
グローバルベースでの菓子市場のシェアは、マーズ/リグレー、キャドバリー、ネスレ、という順位だそうです。
これが大きく塗り変わる可能性がある。
資料を読むに、アジアや南米などあちこちで競合していて、これが買収提案の理由になっているんですね。単なるドメスティックな要因ではない。
クラフトはホワイトナイトが登場することはないと踏んでいるそうで、一方のキャドバリーは買われる必要性は全くないと考えていて、こういう話を聞くとこれから一波乱ありそうな感じで、野次馬的にはおもしろそう。これから動きが注目されているのがハーシーとネスレだそうです。
さてこの菓子分野、日本のメーカーはガラパゴス状態からなかなか抜け出せていません。まあ資本が大きいから良いというわけでもないのですが、でも外側ではどんどん巨大化しているのに、それで大丈夫なのかと他人事ごとながら心配になります。
我が国の菓子メーカーは非常に優れた技術を持っているだけに、欧米資本には負けて欲しくない。こういうグローバルな買収攻勢に社名が出てくるようなレベルにはなって欲しいものです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:46 PM |
June 4, 2009
[プロクター&ギャンブル] 小売の買収で高級メンズグルーミング市場を強化
P&GがArt of Shavingというハイエンドモール内に出店している専門店チェーンを買収します。
アート・オブ・シェービングは36店舗、シェービングサービスの提供と高級グルーミング商品の販売がこの企業のコンセプトです。
もともとP&Gが買収したジレットが2007年にアート・オブ・シェービングで商品を販売し始めたことから関係がスタートしたのだそうです。150ドル近いひげそりをここで販売、五枚刃なんてのもあるらしい。替え刃がジレットオンリーなので、替え刃需要が見込める小売各社からの反対もなかった。
P&Gの目的は、プレスティージなグルーミング市場のマーケティングにあります。実際に小売を運営し、お客と接し、商品を売ることで、市場の知識を獲得しつつ、自社商品の拡販にもつなげたい。
P&Gは昨年のFrederic Fekkaiの買収でサロンもすでに所有してます。
またSK-Ⅱをプレスティージブランドとして高級デパートでのブティック展開も開始している。
マスからプレスティージまで、レディースもメンズも、ビューティケア全市場を網羅しようとしているわけですが、ことプレスティージに関しては自らの手で小売フォーマットを所有してマーケティングしようとしているというわけです。
ちなみにアート・オブ・シェービングの商品はセフォラでも売られているそう。専門店の獲得だけではなく、ブランド商品の獲得でもあるわけですね。
洗車、クリーニング、ネットスーパー(イギリス)、グルーミング専門店と、P&Gと消費者のダイレクトな接点がどんどん増えてます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 8:58 AM |
May 29, 2009
[プロクター&ギャンブル] 戦略を転換し低価格帯へプライスレンジを拡大
プロクター&ギャンブルが昨日投資家向けのカンファレンスを開催しました。CEOのラフリーは今まで強気のコメントを維持してきていたのですが、おそらく価格戦略をシフトするんじゃないかと憶測を呼び、業界では少なからず注目を浴びていましたのですが、ほぼ予測通りの内容となっています。
これまではプレミアム商品ラインを重視してきたのですが、プライスレンジを下(または商品構成グラフでは左側)へと広げ、低価格帯商品に重心をかけるとしています。洗剤ではGain、おむつではLuvなどすでに成功例が出ていることを引用、両者の売上の伸びは高価格帯のTideやPampersよりも高い数値を記録しているそう。
またこの領域での商品開発もこれから強化するとしています。
ただプレミアム商品ラインも従来通りに開発するそうなので、つまり価格帯の高い方と低い方に重点を置く戦略になるようですね。
トレーディングダウンとトレーディングアップで、真ん中が空洞になる。景気の悪化でこの傾向が強まったということでしょうかね。
それと値下げも検討しているそうです。
どの程度になるのかは不明ですが、これが業界にどの程度の影響を及ぼすのかは注目です。
実は、マルボロフライデーにかけてタイド・サースデーになるのか、と言われてます。
マルボロフライデーは1993年4月2日にフィリップモリスが、市場シェアの低下に対処するために大きな値下げを断行し、ブランドエクイティが壊され、株価が大きく落ちた有名な出来事のことです。
どうでしょうね。
リーディングカンパニーのP&Gのシフトですから、追随する企業も増えるんじゃないでしょうか。
しかし、いままで小売からの値下げプレッシャーを受けつつ、値下げはしない、マーケティング強化で乗り切ると言っていたので、大きな戦略転換ですねえ、これは。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:21 PM |
February 27, 2009
[プロクター&ギャンブル] ウォルマートの販促ディスプレーからRFIDを撤去
RFIDは商品やパレットに付けて動きを追うだけではなく、いろいろな用途で使うことが可能です。ここ数年使われ始めたのが、販促ディスプレーにつけて企画通りに店頭で展開されているかどうかをモニターするプログラムです。
業界誌が数日前に報じたところによると、P&Gがウォルマートに対して実施していたディスプレー用RFIDを撤去してやめたそうです。
理由は、店頭で人が動かない点にしびれを切らしたから。当事者たちではなく、関係者のコメントとして掲載されてます。
つまり、ウォルマートの店員が期待通りに動かなかったということを意味しています。
販促企画品が店頭で意図したとおりにちゃんと置かれているかモニターし、そしておかしいなと気づいたとしても、店頭で問題を修正する人がいなければ効果が出ない。いずれにしても最終的には人間が介在しない限り、技術の粋を尽くしたRFIDも"猫に小判"に終わるということです。
販促ディスプレーのRFIDによるコントロールはかなり有望なシステムだと私は思っているのですが、人を動かすことも同時に平行して取り組んでいかないと成功しないというわけです。
こういう最大手企業の最先端の取り組みと、失敗例を知ることができるということは、我々にとっては幸いと言うことができます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:25 PM |
January 23, 2009
[流通業界団体] FMIとGMAがコラボレーションで合意書に調印
GMA(Grocerry Manufactures Assocition、グローサリー製造業協会)は食品と日用品を製造しているメーカーが集まっている協会、FMI(Food Marketing Institute、食品マーケティング協会)はスーパーマーケット企業が集まっている協会です。
この二者が今後いっそう協同して活動するという合意書を先月交わしました。
サプライチェーン、情報テクノロジー、環境問題、といった分野の改善や効率化で、両者がより一層協同して取り組むという内容で、双方のスタッフが一緒に共同作業するというような具体的なプランも含まれています。また、大手メーカーとリテーラーの経営者たちを集めての定例エグゼクティブミーティング(日本だと理事会や役員会)を合同で開催したりもするそう。
グローサリーの日本語訳は食料雑貨でして、もともと非食品も含まれている言葉です。アメリカのスーパーマーケットで売られているものを思い起こしていただければ分かりますが、薬、文具、雑誌、といった分野も含まれる。GMAは非食品も含めたいわゆる日用必需品を製造しているメーカー集まっている業態協会でして、このタイプは日本には存在しません。
日本はお役所ごとの縦割り官僚型協会でして、生活者視点ではないんですね。
ですから今回のような、メーカー協会と小売協会が業界を代表して覚え書きを策定して、業界をあげて積極的にコラボレーションを推進しましょうというような取り組みが、なかなか進みません。
GMA型の協会は日本でも必要だと思ってまして、この点についてはあちこちで言い続けいるんですが・・・。
日本の流通業界のために、いつか実現したいというのが私の夢です。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:09 PM |
November 26, 2008
[食品メーカー] 値上げで好業績、今後の値下げはあるのか?
ウォルマートの政権交代ニュースで隠れちゃいましたが、同じ日にトマトケチャップのハインツが第2四半期の業績を発表してました。売上高3.5%増、最終利益高22%増の増収増益で、好調の理由のほとんどが値上げなんですね。
この好業績はハインツだけじゃなくて、クラフトやゼネラルミルズといった食品メーカー全体に共通していますし、P&Gなどの非食品主体のメーカーにも共通してます。
これに対して、小売側からの反発が強まってきている。
投資家とのカンファレンスコールでハインツのCEOが、"スーパーマーケットや他の小売企業との商談が現在フレンドリーではない"とコメントしていて、軋轢が生じていることをほのめかしてます。
10月の消費者物価が第二次世界大戦以降最大の下げ幅となる1%ダウンを記録して、デフレ懸念が強まってきている。原料も石油を筆頭に下落傾向が出てきています。
こういう環境の中で、メーカーが今後価格を下げるのかどうかに注目してます。
数100アイテムを値下げしてEDLP化で書いたように、値下げプレッシャーをかける小売企業も出てきてます。
ただ、一度上げたものを下げるってのはすごく難しいことです。
消費者としては下げてもらわないと困るんですけどね・・・。
#####
追記:今週はサンクスギビングウィーク、明日から4連休です。企業のニュースもがっくりと減りますので、リテールウェッブもお休みをいただきます。次回のエントリーは12月1日からとなりますので、よろしくお願い申し上げます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 11:24 AM |
November 14, 2008
[ラルコープ] 景気悪化という"追い風"をうけて好業績をキープ
食品メーカーのラルコープが今年度の業績を発表、景気悪化という逆風を追い風として好業績をあげています。売上高は28億2,440万ドルで前年比26.5%増、最終利益高は1億6,780万ドルで426.0%増でした。
このメーカー、今年クラフトからPostという有名なブランドを買収した企業です、買収金額は26億ドル、小さな金額じゃないですね。
ということで、NBも売っているのですが、実は主力はPBです。
トレーディングダウン、つまり'同じ品種なら安い方を'という買い方がトレンドとなって、低価格のPBがよく売れている。
ニールセンによると6月末の時点でPB市場は前年比で10%近く伸びていて、NBの4%を大きく引き離してます。
ここ数日メイシーズの赤字計上を筆頭にして小売業界に低調な決算が続いてますが、一方ウォルマートが好調をキープするなど明暗が分かれてます。
CPGメーカーに目を転じると、今年の値上げで業績の良い企業が多く、とくにラルコープのようにPB主体の企業は猛烈に業績を上げている。
破綻や業績悪化のニュースだけを目にしているとアメリカの流通業界がよほど悪いんじゃないかと錯覚すると思うので、今日はあえてPBメーカーを俎上にあげてみました。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:00 PM |
木材は電気の導体として機能することができます
July 29, 2008
[ユニリーバ] 北米洗剤事業の売却決定
ユニリーバによる洗剤事業売却の衝撃
このエントリーに決着がつきました。なかなか売却先が見つからず、たぶん無理なんじゃないかと言われていたんですが、1年かかってようやく決まりました。
買収するのはベスター・キャピタル・パートナーズという投資企業(プライベートエクイティ)でした。下位洗剤メーカーが買うのではと予測を立ててたんですが、はずれました。総額は14億50000万ドル。
ベスターはHuishという洗剤ブランドを持っていて、これにユニリーバのブランド群を合わせ、サン・プロダクトという企業を設立するそうです。
ユニリーバは北米から撤退するだけで、ヨーロッパ、アジア、アフリカ、南米といった国々では洗剤事業は継続させます。あくまでも、北米においてP&Gとの戦いに負けた、ということになるようですね。
洗剤って、商品に画期的なイノベーションがもうあまりないですよね。完全コモディティと化していて、成長性が低い。石鹸や洗剤で時代を作ったユニリーバが洗剤事業から撤退って衝撃的ではありますが、カテゴリーの面白さという点から見ると、ありうるのだろうなと。
またPEが買収するというのは、おもしろいですね。弱ったブランドを買い、オーバーホールして、再生するという機能を投資ファンドが担っている。日本にもこういう投資企業がどんどん現れて、大手メーカーがブランドをどんどん売却して資産を整理するという時代が来ると、メーカーの体力も強まるし、ブランドも生き返る可能性が高まるし、いいことなんだけどな、などと思います。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:47 PM |
June 5, 2008
[プロクター&ギャンブル] コーヒーブランドを売却
P&Gがフォルジャーズを中堅食品メーカーのJMスマッカーズに売却することを発表しました。売却額は29億5000万ドル。
知らない方も多いと思うのですが、フォルジャーズは年商16億ドルを売る大きなブランドで、インスタントコーヒーとしては全米最大です。ところが、プレミアムコーヒーのブームでスターバックスなど近年この分野に参入してくるブランドが増えて、成長が頭打ちとなってました。
P&Gは年間4~6%の成長が見込めないブランドの売却を検討していて、フォルジャーズもそのスロー成長ブランドの一つでした。スピンアウトして企業として独立させることを考えていたようですが、買収先が見つかったわけですね。
左の写真はウォルマートのPBサムズチョイスですが、オーガニックとフェアトレード版で、プレミアムクラスとなります。ウォルマートでさえこういうPBを導入しているというわけです。
さて、成長が遅いブランドを売却し、どこにリソースを投入するのかと言うと、HBCということになります。とくにビューティケアとパーソナルケアに成長性を見出していて、ライバルのユニリーバも同様の戦略にシフトし始めています。
ユニリーバによる洗剤事業売却の衝撃
このことはメーカーに限った話ではありません。これから伸びるし、利益も取れますし、小売業界もHBCに成長性を見出し強化している企業が多い。
ターゲットは言わずもがな、例えば最近のウォルマートのビューティケア売場のバージョンアップは驚くべきものがあります。本社近くの店舗では、画期的な売場を実験したりしてます。
クローガーのマーケットプレイス型のプロトタイプもビューティケア売場をかなり強調している。
日本の大手小売企業が食品だけにしか目が行っていないのと対照的なんじゃないでしょうか。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 12:52 PM |
May 29, 2008
『インベブ、アンハウザーに敵対的買収』を考える
インベブ(InBev)はベルギーベースの飲料メーカーです。これがアメリカを代表する酒メーカーのアンハウザー・ブッシュに敵対的買収を仕掛けるかもしれないそう。
アンハウザーのフラッグシップブランドは、あのバドワイザーです。
インベブって全然知らなかったんですが、2004年にベルギーの企業とブラジルの企業が合併してできた企業なんだそうですね。現在130カ国に200ブランドを展開している世界最大手で、昨年の売上高が144億ユーロなので、2兆円を超える大企業です。
この買収プラン、言ってみれば日本のキリンやアサヒが外国企業によって買収目標にされるようなもんです。
これに対してアメリカが、スチールパートナーズが資本買収を仕かけたときの日本のように全経済界をあげて買収防衛策を弄するのかどうか。
たぶんしないでしょうね。
同じ誌面に武田薬品による米国企業買収の話が出てました。先月ですよね。88億ドル(約1兆円)という大きな案件です。
それと、大塚製薬がフランスの大手ミネラルウォーターメーカーを7億5000万ユーロ(約1,220億円)で買収するというニュースも昨日紙面で報じられました。
日本企業が海外企業を買収するのはOKで、外国企業が日本企業を買収するのは巧妙に阻止するって、どういうことなんでしょう。
閉鎖的というよりも、アンフェアという表現が妥当かなと。
釈然としませんよね。
日本の経済界のお偉方たちって、アンフェアなことをやっていて、これからのグローバル時代を乗り切っていけるとでも思ってるんでしょうか。
誤解無きように付け加えておくと、日本の企業が外国資本に買われることを愉快なこととは僕は思ってません。愛国主義とは言わないけど、やっぱり日本企業には頑張って欲しい。ただアンフェアはよろしくない。
インベブ対アンハウザー案件で、こんなことを考えたのでした。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 10:51 AM |
April 29, 2008
[マーズ] 230億ドルでリグレーを買収
今日は小売業ネタではなくて、食品メーカーネタです。
菓子メーカーとのマーズが、リグレーを買収することで合意したという発表がありました。総額は230億ドル、合併後の両社の売上高は244億ドルとなって、アメリカ国内では2位となるハーシーを大きく引き離して断トツのトップとなります。
ただし、この買収はグローバルレベルの視点が必要でして、世界規模で見ると専業ではないものの菓子ブランドを多数持つネスレが年商1000億ドル超で断トツ、また100億ドル規模の英キャドバリーもアメリカに大きな市場を持ってます。つまり、ネスレ、マーズ/リグレー、キャドバリー、ハーシー、という順位となるわけです。
菓子市場だけでみると、マーズ/リグレーはシェア14.4%となリ、キャドバリーの10.1%を抜いて1位となります。
マーズはチョコレート、リグレーはガムと、中心となる分野が異なるため、今後FTCの査定があるものの、ほぼ買収は承認される見込みです。
この買収、アメリカ市場の問題ではなく、グローバル市場での競合問題が引き金を引いているという点に私は興味を持ってます。インド、中国、ロシア等の発展途上国でガムやキャンディといった菓子市場をさらに強化したいという狙いがあるわけです。
世界の菓子市場は細分化されていて、トップ10メーカーが市場の47%を占めているに過ぎず、残りは各国の中小メーカーがローカルで頑張っている図式なのだそう。これにいま上位集中化のトレンドが発生し、今回のディールが契機となる可能性がある。ネスレ、キャドバリー、ハーシー、そしてひょっとするとクラフトが参戦し、上位集中化に拍車がかかってゆくだろうというのが、業界の見方ですね。
残念なのは、日本のメーカーが入っていないことです。
自動車や家電といったハードな製造業にはグローバルメーカーが一杯存在するのですが、食品業界には希少。
日本の食品メーカーも、人口減による市場縮小が叫ばれる中、海外市場はキーワードであるはずなんです。でもいったん海外に出ると、そこには巨大な資本を持ったグローバルメーカーが存在する。
欧米食品メーカー(だけではなくて、本当は非食品もなんですが)がどんどんサイズを大きくしてゆく中、日本の食品メーカーの動向がとても気になり始めてます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:08 PM |
April 28, 2008
「マーズによるリグレー買収、激しくなる菓子メーカーのグローバル競合」Vol.12,No.18
アメリカ流通eニュース
菓子メーカーとしてナンバーワンの売上高を誇るマーズが、同じく菓子メーカー大手のリグレーを買収することで合意した。買収総額は約230億ドル、両社の売上高を単純に合算すると244億ドルとなり、2位ハーシーの49億ドルを大きく引き離して断トツのトップとる。
マーズの主力カテゴリーはチョコレートやキャンディ、一方リグレーはガムなので、今後FTC(連邦取引委員会)による調査が入るものの、ほぼ買収は成立するものと見られている。
この買収のインパクトは小さくない。米小売店舗のレジ周り商品がマーズ一色になってしまうかもしれない。またこの買収の動機の一つが実はグローバルコンペティションで、つまりグローバルな菓子市場に与える影響も小さくないのである。
<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:06 PM |
April 8, 2008
小売企業数社がが菓子メーカーを提訴
CVS、デレーズ、ジャイアントイーグル、ハイビー、クローガー、マイヤー、パブリックス、ライトエイド、セイフウェイ、ウォルグリーンがそれぞれ、大手菓子メーカーのキャドバリーシュウェップス、ハーシーズ、マーズ、ネスレを相手取り、価格カルテルを理由として提訴しました。02年から今に至るまで、共謀して価格を維持してきたとしています。
ヨーロッパでは当局による調査がすでに始まっていて、ドイツの大手メーカーのオフィスが強制捜査された模様。カナダでも捜査がはじまっていて、米国も提訴を受けて捜査を検討しているようです。
当然メーカー側は反論してます。
公正取引に抵触しているのかどうかは法廷での行方を見守る必要がありますが、カルテル云々よりも、小売企業が価格問題でメーカーを相手取って提訴するということがあるという点に興味を持ちました。
いま日本では横並びで価格が上がってますが、果たして正当化できるのかどうか。かなりグレーな印象を持っているのは私だけなんでしょうか。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:50 PM |
February 25, 2008
「P&Gの人員解雇なきリストラ」Vol.12,No.09
アメリカ流通eニュース
原材料費の高騰を理由としてメーカーによる価格の値上げが相次いでいる。ほとんどが'企業努力の範疇を超えてしまったためやむなく値上げする、ご理解いただきたい'というスタンスだ。日米のニュースを見比べていると、アメリカでももちろん値上げの動きはあるのだが、日本の方が値上げの動きが強いように感じている。
たぶん日米ともにインフレ懸念はますます加速してゆくのだろう。
さてこの環境の中で、消耗必需品業界において最大のメーカーであるP&Gがリストラプランを発表した。なるほどそういうものだろうなと思わせるプランで、いろいろ考えることが多かった。
<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:10 PM |
January 31, 2008
大手食品メーカーの業績悪化
食品メーカー最大手のクラフトと、シリアルで有名なケロッグの二社が相次いで増収減益を発表したのですが、利益が落ちた理由は原料コストの高騰で、対処するためにこれから売価を値上げするとのこと、食品インフレは日米同時進行であることを実感するニュースでした。
一つだけ違いを感じたのは、原料コストアップの理由として日本のメディアが報じる内容には原油価格の高騰が占めている比率が多いように思うのですが、アメリカではそれよりも、中国やインドといった途上国での肉や乳製品の需要が高まって飼料のコストが上がっていることが第一に挙げられていることです。
視点が若干異なっているように感じました。
景気後退説が出てきているアメリカですが、食品価格の上昇が消費に与える影響が気になるところです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:18 PM |
November 19, 2007
グローバルマーケターズ100社、06年度も1位はP&G
今年で21年目となるAdvertising Age社によるグローバルマーケターズ100社が発表されました。最低3カ国で営業している企業に限定したグローバルランキングです。
昨年のエントリーはこちら。
グローバルマーケターズ100社、1位はP&G
昨年のトップ100社による総支出は978億ドルで前年比1.1%増、その前の5.1%増から大きく落ち込んでいます。大手米国企業、具体的にはゼネラルモーターズやジョンソン&ジョンソンらによる支出カットが影響しているのだそう。
1位はP&Gが断トツで85億2000万ドル(前年比4.1%増)、6年連続の1位で、2位のユニリーバを大きく引き離しています。1位と2位の差が非常に大きく、大きなM&Aが2位以下の企業にない限りおそらくここしばらくは1位を維持することになりそうな勢いです。
小売業界では、シアーズホールディング31位、ウォルマート46位、アルディ81位、カルフール87位、イケア91位、がランクインしてます。このアルディ、広告とは無縁に見える企業なのでけっこう意外です。
日本市場だけに限ると当然自動車と家電メーカーが上位を占めるのですが、昨年いなかったセブン&I7位、イオン9位と、小売企業2社が顔を出しているのが印象的でした。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:10 PM |
November 6, 2007
[スターバックス] ゴディバ買収に入札
親会社のキャンベルスープが売却プランを発表していたゴディバに対して、スターバックスが入札していることをWSJ誌が報じました。ゴディバの売却予想額は8億ドル、スターバックスはいままで1億ドル以下の買収しかしてこなかった企業なので、発の大型買収になるかもないそうです。
他の入札企業はハーシーとリグレーだそう。
実は日本の明治製菓やロッテが出てくるかな、なんてことをひそかに思っていたのですが、やっぱり規模が大きすぎましたかね。
スタバが登場するとは思ってもみませんでしたが、考えてみるとこのマッチングは相性がすごく良さそうですねえ。スタバの店舗にゴディバを置く。ゴディバの店舗でスタバのコーヒービーンズを売る。
なるほど、とうなってしまいました。
写真はバーンズ&ノーブル内のスタバの前に陳列してあったゴディバ。すでに双方実際にカップリングされているというわけです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 6:58 PM |
October 29, 2007
トップスという食品メーカーの倒産
日本では食品企業による偽装問題が噴出しています。アメリカでは偽装ではなく、プロセスの怠慢による汚染によって実際に病人が出てしまい、大量のリコールとなってメーカーが倒産にいたっています。
メーカー名はトップスミート、同社製のハンバーガー用ミートパティを食べた40人がO-157を発症し、11トンの商品のリコールとなって、倒産しました。
COOのコメントを直訳します。
「わずか一週間で、全米最大の冷凍ハンバーガーメーカーから、大量のリコールを乗り切ることができない倒産企業になってしまった」。
汚染にいたるプロセスはすでに明らかになっているのですが、結局のところ決められた手順を守らず省いてしまったことにあります。
偽装というものは、いつかこういうことにつながる可能性があるのだということを、食品企業の担当者は想起しておく必要があります。このくらいいいだろうという小さな怠慢が、いつか企業倒産にいたることもある。当たり前だけど、病人が出てからでは遅いのです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:55 PM |
October 2, 2007
メーカーに恩恵が薄い? ウォルマートの環境イニシアチブ
先週ウォルマートに関して、衣料用洗剤を濃縮型に絞るウォルマートと、ウォルマートによる温室効果ガス排出量削減イニシアチブ、という関連する二つの記事をエントリーしました。
双方ともにウォルマートによるサステナビリティイニシアチブなわけですが、ここでウォルマートは'Win-Win-Win'という表現を使っているようです。小売、メーカー、そして消費者の三者がWinする、という言い方です。
これに対してAdvertisingAge誌がシニカルな見方を記事としています。総体としてのエネルギー消費量の削減をメーカーに迫るウォルマートのイニシアチブはメーカーによる大きな初期投資を必要とするのだが、それによって達成されるコスト削減分のご利益のほとんどはウォルマートに行ってしまう、という主張です。
P&Gだけでも2億ドルの投資が必要となるんじゃないかと言う見方があるのですが、メーカーに対するリターンは大きくはないだろうとしています。
この記事を読んで、物事は複眼で見る必要があるなとあらためて感じました。
ふと思ったことです。
誰がアウトバックのストーブを作る
日本の小売企業はメーカーに対して協賛金による支援をなにかにつけて要請するのですが、金銭をダイレクトにねだるやり方はもう時代遅れではないかと思っています。そろそろこのあとあと禍根を残しがちなやり方から、ウォルマート流のナレッジで支援を要請するやり方に進化したほうが良い。
今回のサステナビリティイニチアチブも、メーカーが投資し、ウォルマートがリターンを得るのであるならば、'ダイレクトにお金をねだらない実に巧妙な支援要請戦略である'と言うことができるわけです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 12:13 PM |
October 1, 2007
リーダシップランキングに入らない日本企業
Fortune誌10月号に、The Top Companies for Leaders 2007というランキングが掲載されています。強いリーダーを開発する仕組みを構築している企業をグローバルで集めてランクを作っているものです。
ここに日本企業の名前がまったくない。
総合ランクに加えて、アジアパシフィックというセグメントがあるのですが、中国、インド、マレーシアの企業がランクインしているにもかかわらず、日本企業はいっさい入っていません。
これは、どうしてなんでしょう。
アメリカのビジネス誌ですから、身びいきするのはよくわかる。トップ20に米国企業が10社も入っているのですが、比率として本来そんなに入るはずはないと思う。ただ日本企業が一社も入っていないというのは、どうも理由が分かりません。
トヨタや松下など、人材教育jに熱心ないい会社はいっぱいありますから。
選択の基準となったリサーチの方法を読んでも、日本が出てこない理由がどうも分かりません。
英語に弱いということがあるのでしょうか。
それと、日本の企業はもともとリーダーを養成するという思想がありませんでしたので、そのせいかもしれませんね。マネジャーを養成する仕組みを持った企業はあまたあるけれど、人を統率できるリーダーを輩出させる体系的な仕組みを持った企業は、ないのかもしれません。
マネジャーとは権威を与えられた上で一定部門内を管理する能力ですが、リーダーシップとは部門を超えて権威の及ばない人たちをも動かせる能力のことで、厳密に言うと双方は異なります。
ただ、なんかこう腑に落ちない、気にいらないランキングではありました。
ところでこのランキングで、1位はゼネラルエレクトリック(GE)、2位はP&Gでした。
実は某酒類飲料メーカーさんが特約店に対して発行しているHot Lineという小雑誌に、社員教育をテーマにアメリカの流通業について寄稿したばかりなのですが、私が選択した企業はGEとP&Gでした。
はからずもこの2社がFortune誌に1位と2位に選ばれて、手前味噌ながら私の見立てに間違いはなかったなとひそかに思っているところです。
企業の強さを最後の最後まで突き詰めると、つまるところは社員教育に対する思想に行き着くと最近思い始めてます。その教育も技術論だけではなく、根本的なところに存在する社風というか、英語で言うとバリューとなるわけですが、そういうものを繰り返し繰り返し教え込もうとする仕組みを持った企業が、未来永劫反映を続けるのだろうなと、やっとこの年になって気がついたわけです。
GEもP&Gも、そういう会社です。
GEはコングロマリットですが、家電製品に注目すれば消費財メーカーです。P&Gも消費財メーカー。消費財を作るメーカー2社がトップに立つところに、日本とアメリカの違いというか、アメリカのおもしろさを感じています。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:54 PM |
August 16, 2007
米マテル社の自主回収
玩具大手メーカーのマテルが、中国製玩具の安全性に問題があるとして自主回収を進めているのはご存知の方も多いと思いますが、対象商品が拡大しつつあります。
14日に発表のあったアイテムは、基準値を超える鉛を含んだ塗料を使ったミニカーで、およそ50万個が対象となるそう。
小型で強力な磁石がついた玩具のリコールをはじめたのが1日のことでした。はずれたものを乳児が誤飲し死亡する事故が05年に発生しているものなのだそうですね。
グローバルレベルで、トータルすると1900万個のリコールになるとしてます。またこれからさらに対象商品が拡大する可能性を否定していません。
ニュースでは、ウォルマートやターゲットの店頭から撤去される商品の模様が放映されています。
現在消費者対象にマテルが打っている手は二つ、一つ目はCEOロバート・エカートがビデオで謝罪、オンラインでリリースされました。二つ目はニューヨークタイムズとウォールストリートジャーナルで一面を買って謝罪広告を載せています。
大きな問題が発生する前にリコールに踏み切ったこと、CEO自らがすぐに出てきて謝罪したこと、このあたりが評価されています。リスク管理はまずまずということですね。
ただ今年の歳末商戦に向けてかなりのダメージを負ったという見方もありますし、ひょっとするとバービーを含むマテルのブランドの転換点になるかもしれないとする識者もいますので、予断は許しません
日本でも同様なのですが、アメリカでも、練りハミガキ、タイヤ、ペットフード、シーフードと、中国からの輸入商品で問題が多発してます。Made in Chinaに対する信頼性が揺らぎ始めている。
我が家も、少なくとも食品に関しては中国製は可能な限り避けるようになってしまった。
この中国製品のアメリカにおける最大の輸入企業が、実はウォルマートです。
じわじわと影響が出てくるのかもしれないと思ってます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:13 PM |
August 14, 2007
ダンキンドーナッツのコーヒー
P&Gがダンキンドーナッツからライセンス供与を受けて、'ダンキンドーナッツ'ブランドのコーヒーを販売するそうです。チャネルは、スーパーマーケット、マスリテーラー(ウォルマートやターゲット)、メンバーシップ・ホールセールクラブ、そしてドラッグストア、つまり日常の商業全体ということですね。8月半ばに販売開始だそうですから、もうどこかで売っているのかもしれません。
これ、売れるんでしょうかね・・・?
ダンキンは、スターバックスの成功を横目で見ながら、最近フォーマットの転換を行いました。ドーナッツにコーヒーを加えたカフェ化なのですが、スタバが上層だとすると、ダンキンは中層以下を狙っている。
『ダンキンドーナッツ2.0』
今回のニュースは、スタバがリテールチャネルで豆を売っているのを横目で見て、これもコピーする、ということになる。したたかというか、なんというか。
ちなみに本日のAdAgeは、P&Gが来月の9月に、デュラセル(乾電池)、フォルジャーズ(コーヒー)、そしてプリングルス(ポテトチップ)の売却の可能性を検討する、と記事にしていました。クラフトはマックスウェルハウス(コーヒー)、ポスト(シリアル)の売却を検討している可能性があるそう。
ユニリーバによる衣料用洗剤事業の売却プランに典型ですが、儲かっていても成長性を見込めない北米事業の売却をアメリカの大手メーカーは考えているらしい。
とすると、ダンキンコーヒーも導入早々に他社に移ってしまうのかもしれないわけですねえ・・・。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:11 PM |
August 6, 2007
ユニリーバによる洗剤事業売却の衝撃
この件、日本ではあまり話題になってないかもしれませんが、私にとってはけっこう衝撃的なニュースです。
発表されたのは先週の第二四半期の決算発表時、決算自体は16%の増益で悪くはないのですが、選択と集中、つまり現在伸びている事業(例えばパーソナルケア)に集中するために、将来性が見込めない事業を売却するというわけです。
洗剤市場におけるP&Gとユニリーバの戦いは、40年代にまでさかのぼるそうで、つまり60年間近く火花を散らしてきたわけです。
現在シェアはP&Gが62.5%、ユニリーバが12.9%なので、数値上は決着がついていた。しかし売却するとは夢にも思わなかったので、驚きました。
ただどうも業界では、既定路線ではあったようですね。
ちなみに同社の米国洗剤事業は11億ドルを売り上げています。また売却するブランドは、ALl、Snuggle、Wisk、Surgなどで、買収企業として候補にあがっているのは、Hankel(Dial)、Church&Dwight、そしてプライベートエクイティファンド、です。
下位洗剤メーカーが買う可能性が高いように思うのですが、どうでしょうね。
どの企業が買うのか、注目です。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:09 PM |
June 19, 2007
ケロッグが子供向きの広告を制限
食品大手メーカーのケロッグが14日、子供向けの広告に制限を設けることを発表しました。12歳以下の子供が対象で、一定の成分基準を満たしていない商品については広告しないとしてます。
一定基準とは、200カロリー以下、トランス脂肪酸ゼロ、飽和脂肪2グラム以下、だそう。
要するに、太る、または健康にあまり良くない商品は、子供に積極的に売らない、ということです。
この件、「どうして?」と思う方も多いと思いますが、メーカーによる広告の影響が馬鹿にならないということをアメリカは良く理解していて、とくに子供は素直に広告を信じて刷り込まれてしまう危険性が高く、肥満問題が顕在化している中、一つの解決策として広告を制限することが俎上に上がっており、訴訟問題になるまえに自主規制しよう、というわけですね。
タバコやお酒の子供向けの広告が禁じられているのと同じロジックを、子供向けの食品にも適用するというのは、ある意味アメリカならではじゃないでしょうか。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:38 PM |
April 23, 2007
「米製薬メーカーによる営業リストラと医薬品業界の旧弊さ」Vol.11,No.17
アメリカ流通eニュース
年初の1月22日、製薬大手のファイザーが来年までに20億ドルにのぼるコスト削減政策を実施することを発表したのだが、このコスト削減には7800人にのぼるセールスレップのレイオフが含まれていた。このリストラ対象となった米製薬メーカーの営業部隊、その実態は洗練されたものとは程遠い泥臭いものだったようで、薬の世界の古い仕組みは世界共通なのではないかと感じ入ってしまったのである。
<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:32 PM |
March 21, 2007
ペットフードのリコールで露見したシークレット
メニューフードと言うカナダ本社のメーカーが製造したネコと犬のペットフードが、リコールになっていることはご存知の方もいることと思います。
この会社が作った商品を食べた猫が13匹、犬が1匹、腎不全で死亡したのだそう。ただし猫の9匹は、消費者からの苦情を受けて同社がテストした結果によるもので、FDAによると一般からの報告はこれからまだ増えることだろうとしています。
12月3日から3月6日までの間に製造された商品で、およそ6000万個、市場のおよそ1%くらいのボリュームになるそうです。
過去、およそ犬が100匹近く死亡したリコールもあり、事故の規模としてはそれほど大きなものではないのですが、今回のケースがユニークなのはブランド数の多さにあります。
トータルで95ブランド、その多くはリテーラーのPBなのですが、P&Gのアイムスやコルゲートのヒルズなど、NBメーカーによるプレミアムブランドも含まれていたのですね。
特にP&Gはアイムス43、ユーカヌバ25と、リコールSKU数が多かった。
露見したシークレットとは・・・こういったプレミアム商品が、リテーラーが作るPBと同じ工場で作られているのだと言うことです。同等にリコールされると言うことは、同じラインで作られたのかもしれないと消費者は思うでしょう。
プレミアムブランドとバリューブランドの製造者が同じというケースはまあ業界常識と言うか、よくあることなのですが、消費者は普通知りません。高いお金を支払うのですから、それなりの工場で作っているのだろうと思っているわけです。
今回のような多数のブランド名がリコールにからむというのはちょっとまれでして、そのおかげで意外な事実が出てきてしまったのでした。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:18 PM |
December 20, 2006
アラン・ラフリーの『Let it Go』
P&Gのアラン・ラフリーとGEのジェフ・イメルトがフォーチュン誌主催の対談で、新たに出現したYouTubeに代表されるデジタルメディアについて語っています。
GEはNBCという旧メディアを持っているのですが、iVillageという女性向けのサイトを最近買収したばかりです。コントロールし、予測し、儲けの出るサイトを持っているから、「(YouTubeのようなパワフルなブームに)乗り遅れそうかというと、たぶんね」と答えている。
一方のラフリーは、コントロールできないことを理解しなければならないというスタンスです。
「"Let it go" とは、P&Gのイメージに他者が影響を与えることを傍観しなければならないことに慣れなければならないという意味である。だからもしP&Gに対してポジティブなビデオがYouTubeに掲載されたら、P&Gは多くの人がそれを見てくれと願うだけ。もしそれが批判的だったら、わずかな人しか見ないでくれと願うだけだ。これが今我々がいる世界なのだ」。
この対談は、マーケティングをコントロールしようとするイメルトと、コントロールできないことに慣れなければならないとするラフリーとを対比しようとしています。
これはウェッブ1.0型のマーケティングに固執しようとする側と、ウェッブ2.0型のマーケティングに慣れようとする側と、2つの対比と理解してもいいのかもしれないなと思ってます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 4:30 PM |
December 18, 2006
「トランス脂肪酸は日本で規制されるのか?」Vol.10,No.51
アメリカ流通eニュース
トランス脂肪酸(Trans Fat)という食品成分が存在する。ウィキペディアによると、「構造中の二重結合の一部がトランス型になった不飽和脂肪酸。多量に摂取すると悪玉コレステロールを増加させ心臓病のリスクを高める、またアルツハイマーやアトピー性皮膚炎などの現代病の原因になるといわれ、使用を規制する国も多い」となっている。
マーガリンやショートニングなどの加工油脂に含有され、これを原料とする食品に含まれることになり、欧米で摂取量が多いとされる。そのため規制の動きが欧米で活発化していて、アメリカでは1月に含有量の成分表示が義務化されたのだが、さらに厳しい規制がニューヨーク市議会を通り、ひょっとすると全米へと波及するのではないかと言われている。
日本ではあまり問題化していないのだが、セブンイレブンやデイリーヤマザキが自主規制に乗り出すなど、徐々に取り組む企業が出始めている。
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投稿者: 鈴木敏仁 日時: 4:55 PM |
November 28, 2006
グローバルマーケターズ100社、1位はP&G
グローバルマーケターズ100社とは、広告支出の大きい企業のグローバルランキングです(Advertising Age社)。少なくとも3カ国でマーケティング活動をしていることが最低条件。
1位がP&G、2位がユニリーバで、CPGメーカーが上位を占めました。ただ1位と2位の差は2倍で、P&Gは図抜けてます。
小売業ではウォルマートが42位、カルフールが86位と2社のみ。
日本だけに限ってみると、やはり自動車メーカーが上位を占めているのですが、5位に花王、7位にキリンビールがいました。ちなみに花王は100社中41位で、ウォルマートの1つ上でした。
カテゴリー別ではトップが自動車ですが、2番目がパーソナルケア、ユニリーバとコルゲートが成長を引っ張ったそうです。
日本語で言う日用雑貨カテゴリーはけっこう広告支出が大きいのだなということは、意外な発見でした。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 4:55 AM |
October 16, 2006
「Let-go型のマーケティング手法とは?」Vol.10,No.42
アメリカ流通eニュース
今回はマーケティングのネタを取り上げたい。P&GのCEOアラン・ラフリーがANA(全米広告主協会)の基調講演で、これからのマーケティングスタンスはLet-goだと語っているのだが、これがいったい何を意味しているのかについて考えたい。
<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:30 PM |
October 11, 2006
マーケティングに今必要なのは、'Just Let Go'
P&GのCEOアラン・ラフリーが6年ぶりにANA(Association of National Advertises、全米広告者協会)で基調講演をしたのですが、1000人のマーケティング担当者を前にして話したことは、'Just Let Go'でした。
Just Let Goとは、手元から離すとか、やりたいようにさせるといった意味です。
「消費者にコントロールさせれば、気脈を通じて成功する可能性が高まる」
「消費者はもっと参加的選択的となり、プッシュからプルへというトレンドは加速する」
以上は少々観念的ではあるのですが、言いたいことは、メーカーが一方的に商品とブランドを開発しメッセージを投げるプッシュモデルから、消費者に発信してもらうプル型へと転換せよ、ということでしょう。
YouTubeで流れたプリングルスのビデオを講演で使ったようで、これも象徴的です。いかに消費者参加型のモデルでブランドメッセージを伝えるのかが重要なのだということをラフリーは言いたかったのでしょう。
ラフリーは難しいことを短い言葉に置き換えてスローガン化することの非常に上手な人なのですが、この'Just Let Go'もとても分かりやすく、私の腑に落ちました。概念として非常に分かりやすい。
例えば同社の手によるクチコミのネットワーク化で知られるTremorやVocalpointも、'Just Let Go'を具現化したものと言う事ができます。
消費者に商品を認知してもらうという活動のあり方が、根本的な部分で変化してきているように思うのですが、この変化の誘導剤として機能しているのがネットという気がします。
このあたりは、社員1.0には分からないのかもしれないので気をつけましょう(笑)
ラフリーは社長2.0ですね(爆)
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 4:07 PM |
September 28, 2006
P&GがSureブランドを売却
Sureはデオドラントのブランドです。特徴はユニセックスで無香料。
売却の理由は・・・
●売上高10億ドルを越える22のメガブランドを持つP&Gにとって、デオドラント市場の3%を占めるに過ぎないSureは、利益は出しているが、ポートフォリオ管理上マッチしなくなった。
●デオドラントには、女性用にSecretというナンバー1ブランド、男性用にOld Spiceと強いブランドがあるため、必要なくなった。
とまあ、こんなところです。
おもしろいのは、買った会社。Najafiという投資会社が買ったのですが、Pert Plusというフケ止めシャンプーリンスブランドをP&Gから買ったばかりなんです。
投資会社ですから、持ち続けるのではなくて、いつか売却して益を得ようとしている。
つまり、ブランドのオーバーホールを投資会社がやろうとしている。利益はそこそこ出てるんだけど、ポートフォリオ上合わなくなって手放したい、でも買収に手を上げるメーカーもいない、というようなブランドを投資会社がてこ入れするというわけです。
日本にはないですね、こういうの。いかにもアメリカらしい。
今回のSureが2つ目だそうなので、まだ端緒についたばかりでうまく行くのかどうかは分かりませんが、おもしろいトライアルです。
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投稿者: 鈴木敏仁 日時: 1:53 PM |
July 31, 2006
「止められない資本のグローバル化」Vol.10,No.31
アメリカ流通eニュース
ミタルスティールというインドに本拠を置く鉄鋼企業が、アルセロールというヨーロッパに本拠をおく鉄鋼企業の92%の株を取得することが報じられた。鉄鋼業界のことはよく知らないのだが、世界1位の企業が世界2位の企業を買収するという特大ディールなのだそうで、買収後は日本全体の鉄鋼生産分と同じボリュームを、ミタル1社で生産する規模になるという。
このニュースを聞いて私はふと資本のグローバル化というものについて、とりわけ我が国の食品日用品(CPG)業界が今度どうなるのかについて、考えてしまったのであった。
<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:01 PM |
July 10, 2006
「店頭広告の一般メディア化を指向する米国流通業界」Vol.10,No.28
アメリカ流通eニュース
PPAI(Promotional Products Association International、国際販促物協会)という販促物を作る、または使う企業の協会が、インストア広告調査(In-store Advertising Study)というベンチマークスタディを主催し推進しようとしているのだが、主要企業であるウォルマートとP&Gが6月に委員会から脱退することを表明した。理由は明らかになっておらず、様々な憶測が流れている。
興味深いのは、店頭をメディアと捉えて、テレビやラジオ広告と同等の測定基準を作ろうという、このベンチマークスタディの目的である。
<これ以降の内容に興味のある方は、アメリカ流通eニュース(有料)をご購読下さい。>
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 2:14 PM |
July 4, 2006
コカコーラ・ボトラーとウォルマートの熱き戦い
コカコーラのボトラーがゲータレードの物流問題で、コカコーラ本体を相手として訴訟を起こしているそうです。
コカコーラは、店舗に商品を直送する典型的なダイレクトストアデリバリー(DSD)メーカーです。ウォルマートはゲータレードを自社物流網に乗せたい意向があり、コカコーラ本社がこれを受け入れた。しかしボトラーが反発して、契約違反として本体を訴えたというわけです。
コカコーラ本社による裁判所での証言によると、DSDをやめてDC配送にしたらゲータレードの仕入れボリュームを2倍にする、しかし今のままのDSDを維持するならばPBを導入する、とウォルマートはコカコーラに迫ったのだそうです。
背景を理解するために必要な知識は2つ。
まずコカコーラには資本関係の無いボトラーが数多くいて、彼らの店舗直配体制をコカコーラ本社は簡単にはコントロールできないことです。
2つ目は仮説として、ウォルマートがDC配送を迫るということは、ボトラーによるDSDに対してウォルマートが不満を持っているのではないかということです。仕入れボリュームを2倍にするということは、DC配送にすればそれだけ売れると見込んでいるからに他なりません。たぶんボトラー配送には欠品が多いのではないでしょうか。
この件、詳細は流通eニュースに書きます。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:47 AM |
June 15, 2006
ウォルマートとP&Gが店頭メディア実験から脱退
Advertising Age誌が、ウォルマートとP&Gが'In-Store Advertising Study'の参加メンバーから脱退したと報じました。
この'In-Store Advertising Study'とは、POPAI(Promotional Product Association International、国際販促物協会)が実施しようとしてるベンチマークスタディで、テレビやラジオで使われるのと同じようなメディア基準を店頭販促に持ち込めるかどうかを考えようというものです。
例えば、ウォルマートは現在店頭でウォルマートTVというメディアを持っていますが、来店客数を考えると三大ネットワークに次ぐ規模になるといわれていて、じゃあこの店頭テレビで流すCMを1分間買う値段がいくらが適正なのか、といったことを研究しようとしているわけです。
P&Gが抜けた理由はイニシアチブを取れなくなったからだそうで、ウォルマートが抜けた理由は特定されていません。両社が抜けたことで、ベンチマークスタディの実施が延期されます。
ちなみにこの店頭広告の市場は、年間170億ドル規模なのだそうです。
さて、今回俎上に上げた理由は、2社が抜けたことを記事にすることにあるのではなくて、こういうスタディを実施しようとしているアメリカのおもしろさです。
テレビやラジオと同じような基準を店頭メディアに当てはめられないかを販促協会が実施しようとすることそのものがおもしろいし、そもそも店頭をテレビやラジオと同じレベルの広告メディアだと認識してみることすらおもしろい。
延期になったのは残念でした。なんとか実現して欲しい価値あるベンチマークスタディだと思います。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 7:28 PM |
June 12, 2006
グローバルプロモーションの時代
6月7日付けのWSJ誌が、ウォルマートがワールドカップサッカーをネタとして世界中の店舗で販促イベントを仕掛けている姿を報じました。
アルゼンチン、ドイツ、日本、メキシコ、イギリス、アメリカと、各国でイベントを組んでいるわけですが、これをグローバルソーシング部門がバックアップしている。'各国の各店舗に沿った商品を供給するのは簡単ではない'、なんてコメントがありました。
またコカコーラ、P&G、アンハウザー・ブッシュ等のグローバルメーカーもコラボレーションしているとのこと。
メーカーはかなり早い段階からグローバル化を始めたわけですが、その受け皿となるリテーラーもここにきてどんどんグローバル化し始めており、従ってワールドカップサッカーのようなイベントがあると、グローバルに統一感あるプロモーションが組まれることになるわけです。
日本の小売企業は蚊帳の外ではありますが・・・そういう時代がやってきていることを、新聞を読んでひしひしと感じました。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 8:44 PM |
June 9, 2006
P&G、トレードプロモーションのシステムを改革
P&Gがトレードプロモーション(日本語で言うところの流通販促)システムの改革を実施していると報じられました。この分野にメスが入るのは91年のバリュープライシング導入以来なので、およそ15年ぶりのこととなります。
資料によると、P&Gは広告費とほぼ同額を流通販促に使っていて、その額は年間20億ドルと巨額なものです。ですから、シェイプアップのしがいもあるということなのですが、どうやらきっかけはジレットの買収にあるようです。
まだ詳細は明らかになっていませんが、P&Gの幹部は、ジレットはパフォーマンスをかなり細かく特定して販促費を投入しており、これにかなり近いものになる、と語っているようです。
ちなみにジレットは店頭作業のレイバーは直営だったようですが、P&G流のアウトソースに切り替えている、とも報じられてます。
ジレットのフィールドが直営だとは知りませんでした。店頭で見たことないなあ・・・。
ともあれ、P&Gがジレットの影響でどう変わるのか、ベンチマークのしがいのあるケースだと思います。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:04 PM |
May 19, 2006
アラン・ラフリーと質問力
最近P&Gについて追っています。日本ではあまり知られていないことのように思うのですが、P&Gはここ数年大きな変革に取り組んでいて、成功しつつあります。10年前のP&Gとはまったく違う企業へと変わりつつある。
そしてこの変革を引っ張っているのが、The moments of truthで書いたアラン・ラフリーというCEOです。
もしP&Gがこれからさらに成長を続けたら、名経営者として名前をとどめることになるかもしれない、そういうレベルの人だと思っています。
さて今回はこの人のビジネススタイルについて2つ。
まず大変なリスナーなのだそうです。相手の話をとにかくよく聞く。GEのイメルトをして、「スポンジのようだ」と言わしめるほどの聞き上手なのです。
これはとても重要なリーダーの資質だと思います。部下の話をよく聞くことは、彼らの信頼を勝ち得る重要な要素だと思います。
ちなみに私は最悪のリスナーです(笑)
次に、部下に対してとにかくしつこいくらい質問をし、これによって彼らの決断を助けるのだそうです。私はこの質問魔という彼の資質を知って、これもリーダーの大切な資質の一つだと気づきました。
つまり、自分の考えを押し付けることをせず、質問を繰り返しながら、あたかも部下が自分で決断を下したかのように持っていってしまう。結果として自分の考える方向に持ってゆくのだけれど、押し付けではなく、自発的に決めたように持っていってしまうプロセスが優れている。
このことを考えていて、ふと「質問力」(齋藤孝著)という本があることに気づき、日本で購入し読んだのですが、とても参考になりました。
一つ引用すると、最後のエピローグに、「ソクラテスもおもしろい。彼も質問上手であり、質問することがあたかも仕事のような哲学者だ...中略...自分が心理を説くのではなく、相手に質問を発することで相手自身に気づかせていくのだ」、という文があります。
なるほど、ソクラテスも質問魔だったわけです。
ラフリーの大学時代の専攻は歴史でして、ひょっとするとソクラテスからビジネススタイルを学んだ可能性が非常に高いと私は気づきました。
ラフリーに万が一インタビューする機会があって(あるわけないですが...)、このあたりを質問したら、齋藤さんにほめられるやり取りができるかもしれません(笑)
蛇足ながら、家電メーカーのワールプールも変革に成功しつつあるようです。P&Gなどの優良企業が取り組みを学ぶために訪問団を組んで大挙押し寄せているという記事を読みました。だから凋落したメイタグを買収することができたわけです。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 3:52 PM |
May 5, 2006
アイスコーヒー市場の可能性
アイスコーヒーを飲む習慣というものを、アメリカ人はずっと持って来ませんでした。あんなおいしいものをなんで飲まないんだろうと思うのですが、こういう場合、だいたいメーカーの存在がその理由になると私は思っています。つまり売れると見込んで商品を導入する飲料メーカーがアメリカには存在しなかった、ということです。
例えばアメリカでは洗濯物を物干し場で乾かすという習慣がまったくありません。これは、乾燥機が世帯に普及しきってしまったからであり、普及させたのはGEなどのメーカーに他なりません。だって、乾燥機というものが発明される前は、アメリカ人も洗濯物を外に干していたはずなんですから。
干すという習慣をなくさせてしまうほど普及させたわけですから、メーカーの販促の勝利としか言いようがありません。
最近になってようやくアメリカ人もアイスコーヒーを飲み始めました。仕掛けたのはスターバックスです。スタバはアジア商圏進出にあたって市場を調査し、アイスコーヒーなるものが売れていることを知って、これはチャンスがあると感じていた。そしてペプシと組むことで缶入りと瓶入りコーヒーを導入して成功した。店頭でも夏場になるとアイスコーヒーが飲めるようになりました。
つまりアメリカではスタバがアイスコーヒーを飲む習慣を作った、ということになるわけです。
右の写真は、ダラスのセントラルマーケット(HEバット)で見つけた缶コーヒーです。スタバのダブルショットとならんで、2つ別のアイテムが並んでいる。現状ではダブルショットはほとんどのスーパーマーケットやドラッグストアが品揃えしてますが、他の2つは珍しい。スペシャリティ型フォーマットならではと言えるのですが、3アイテム並べている企業は数が少ないでしょう。
アメリカの缶コーヒー市場はまだまだ未成熟でして、これから浸透するにつれて日本のように商品が増えてくるだろうと思っています。
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 6:16 PM |
April 21, 2006
リーダーのコミュニケーション手法
P&GのCEOアラン・ラフリーは、'CPGメーカーにとって消費者がボスであり、The two moments of truth with consumerにおいて、その信頼を勝ち取らなければならない'、としています。
最初の瞬間は消費者が棚の前に立ち、商品を手に取るときで、全世界160ヵ国で毎日3,000万回発生している。
この瞬間に責任を持つのがMarket Development Orzanaization(マーケティングやセールスなど市場に直接関係する組織)。
2つ目の瞬間は消費者が実際に使用するときで、全世界で20億回発生している。
この瞬間に責任を持つのがGlobal Business Unit(R&Dなど商品開発や管理に関係する組織)。
ブランド開発管理と、セールス&マーケティングは、車の両輪なんだということを言いたいわけですね。
このThe two moments of truth、どうやら企業戦略にもなっているようです。
またこの言葉を冠として、商品を手に取るときを分析する、つまりインストアマーケティング専用の部門まで作ったようです。
米国のCPG業界で最近良く目にする言葉でして、かなり浸透していると言っていいでしょう。
とくにインストアマーケティングが重要だということをことさら強調したいときに、引用する人が増えている。
この言葉、個人的に私は非常に良いと思っていますます。
耳障りというか、音感というか、心に響くものを持っている。
ラフリーという人は、何か重要なことを伝えるときに、スローガン化するのが好きなのだそうです。
ブランド開発維持と、セールス&マーケティングが車の両輪であることは、当たり前のことではあるのですが、こういう心に残る短い言葉で言われると、あらためて納得してしまう。
これによって、全社員が同じ価値観を共有できるようになる。
こういう本質を突いた、分かりやすくて覚えやすい、短い言葉で、リーダーは社員とコミュニケートする必要があります。
ちなみに日本語では、「2つの真実の瞬間」。
ちょっと分かりづらいです(笑)
投稿者: 鈴木敏仁 日時: 5:39 PM |
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